釣り上げた魚    de JH3AEH 東大阪市 東條純一


私の釣歴は比較的浅い。そして、その経歴も人とは少々違って

いる。皆様同様、近くの池に近所の悪童達とたまに出かけた以外

には、川にも、ましてや海等に釣りが趣味ですと出かけたこと等

全く無かった。でも、今から思うに東條少年の当時の行動に、今の

私の釣行に一脈通じるものが無いでもない。奈良の田舎に疎開

していた未だ小学低学年の頃だと思う。冬から早春にかけて、

学校から帰ると鞄を放り出して近くの溜池の土手に、そり滑りに

出かけるのが日課のようになっていた。
土手の下には池の水を田畑に送る排水溝、というとコンクリートの

冷たい溝を想像するが、そんなものではない。乾いた枯草の下の

奥から清らかな水がこんこんと湧き出ている秘密の場所なのだ。

暖かい日差しに誘われるように小鮒が数匹静かに顔を覗かせては

引っ込むのである。そり滑りに疲れると、ここで枯草の上に腹ばいに

なり水面に顔を突き出して、日が西に傾き肌寒くなるまで小鮒たちを

眺めていたものだ。


そんなある日、悪童に誘われて訪れた釣具店で私は何とも美しい

飾り物のような、でも確かにその先には小さくて鋭い針のついた

擬餌針に魅せられてしまった。私はそれが擬餌針というもので

あることも知らなかったし、こわい悪童の後から、おずおずと入った

店で”これ何ですか、どのように使う物なのですか”と聞いてみる

勇気など全くなかった。でも、咄嗟にあの土手の下の小鮒たちが

頭の中をよぎり、そして思った。あの春の日差しの下にちょこっと

顔を出す彼らも、こんなに美しいものなんだからきっと飛びつくに違いないと。     写真が見苦しくてごめんなさい。


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